みんなの冷蔵庫(仮)1
沈黙の中、妙にゆっくり時が流れるような錯覚。

ゆっくりまっすぐ自分に向けて伸びてくる、薄いブルーのコットンシャツの細い腕に、動揺して動けない。

音もなく、言葉もなく、シグマはただじっと私の目を見て微笑みを浮かべたまま、その伸ばした手で、温かい指で、私の頬に軽く触れた。

それでもまだ動けない私は、ただぽかんとシグマを見た。


なななな何? この甘い空気?! 


心の中で叫んで、心臓が痛いくらい「どうしよう?!」と焦りが押し寄せているけれど。

そんな表情を出すのが恥ずかしくて、何ともないような顔をして、シグマの瞳を見つめ返した。

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