みんなの冷蔵庫(仮)1
私は昨夜の事もあり、喉がつかえて「おはようございます」の一言すら言えず、ただ小さく口をぱくぱくさせた。


「すぐ準備しますから、座って待ってて下さいね」


佐田さんがドアを開けて待っていてくれるので、仕方なく近寄り、部屋へと足を踏み入れた。


初めて入るその部屋は、頭の中の「お金持ちの食卓」というイメージをひとつも裏切らない、まばゆい部屋だった。

床には複雑な模様の絨毯が広がり、入口と反対側の壁は一面ガラス張りで、薄いカーテン越しに光を受け、部屋は清々しい朝の空気に包まれていた。

中央に金ぴかの足の長方形の六人掛けテーブルがあり、京極とシグマが向かい合わせに座っている。

佐田さんも入ってくるかと思いきや、私の背後で静かにドアは閉まった。


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