みんなの冷蔵庫(仮)1
シグマが横で話すのをぼんやり聞きながら。


佐田さんの名前……。

龍人。

心の中で字を思い浮かべただけで、胸が熱くなった。


「おい、なぜこんなに美形の僕が目の前にいるのに、わざわざ佐田なんだ? まあ、かといって僕に恋をされても困るけど……」


京極が全て言い終わる前に、私は拳を振り上げて見せた。


「あんたに恋する事だけは絶対にない!」


低い声で言って睨み据えると、京極は鼻を軽く鳴らした。


「そもそも佐田が言い出したんだぞ、お前を見張るって。なのに僕だけ悪者か」


京極の不服そうなその言い方に、心の中の何かが割れるような衝撃がする。


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