みんなの冷蔵庫(仮)1
「冷たい水で顔を洗え」


京極が顎で指した左奥にある洗面所へ行き、大きな鏡で自分を見た。

酷い顔をしていた。
目やにこそ付いてはいないが、泣きはらしたせいで顔はむくみ、まぶたは腫れぼったく赤いし、何より精気のない薄ら暗い顔をしていた。


「死んだ魚だって、もう少しマシな目をしている」


腕を組み、肩を壁にもたれ立つ京極と、鏡越しに目が合う。

彼は呆れたような顔をしていた。


「佐田はお前を命懸けで守った。違うか?」


私は無言で頷き、目を閉じる。
頭に助けに来てくれた時の、佐田さんの必死な顔が浮かび、閉じた瞼が震えた。
ただただ、胸が苦しくなる。息を吸う度、空気じゃない物を吸い込んでるんじゃないかと思うくらい、重苦しかった。


「シグマは襲われていない。うちより金を出すから取引をしようと持ち掛けられたそうだ」



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