みんなの冷蔵庫(仮)1
「大丈夫だよ」


膝の上に置いた手首に、覆いかぶさるようにすがりつくシグマの肩を見て、急に昨夜佐田さんに抱き着いて泣いた事を思い出し、私の胸は苦しくなった。


そのまま動かなくなったシグマに「大丈夫だから」ともう一度言って、すぐ目の前にある柔らかそうな髪に触れようと指を近付けた時、弾かれたようにシグマが上体を起こした。


「俺の時と同じ人?」


シグマは京極へ真っ直ぐ睨むような視線を向けて言った。


「恐らく」

「俺がお金必要だって分かってるから、下に見てる感じ丸出しだったんだ。嫌なおじさんだったよ」


落ち着いた京極の声に被せるように、シグマは声を荒げた。


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