みんなの冷蔵庫(仮)1
「母親はいない。僕が小学生の時に出て行った」


離婚なんてよくある事だと、そんな風に取る事ができないくらい、京極のその言い方には悲しみが満ちていた。


「内縁の妻ならいるが、彼女は事情を知っている」


余計な事を言ってしまったと私が落ち込みかけていると、京極はいつものトーンで続けて言った。


「え? 知ってるって……いきなり消えたって事を?」

「そうだ」


信じられないと思いつつ尋ねたのに、即答される。

光が出る当事者の私ですら、納得いかないようなこんな話を、よく信じる人がいたなと驚く。


「よく信じたね」


シグマが私の気持ちを代弁するかのように言った。

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