みんなの冷蔵庫(仮)1
成金かもしれないが、お金が沢山あるのは事実で、僕はそれを欲しい物があれば躊躇うことなく使う。

僕に対する評価が見た目だけであることも、特に気にとめない。

モテない奴のひがみだと受け流す。

女の子達が寄ってきてくれればそれでよかったし、特に悲観的になる事もなく、気ままに過ごしていた。

ただ、この時佐田に見つめられ、僕だけのために、僕とだけコミュニケーションを取ってきたこの大人に、僕は夢中になった。

母がいなくなり、父は殆ど家にいず、今まで大人と他愛のない話をしてこなかった。

誰も僕に矢印を向けて来なかった。

自分に向けられた矢印がないと、自分も矢印をどこへ向けたらよいかわからない、そんな状態だったのだと思う。


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