みんなの冷蔵庫(仮)1
その日、僕専用の運転手に頼み、宝飾店に連れて行って貰い、プラチナのリングを買った。

サイズを聞かれても分からなかったので、うんと大きなサイズで今すぐ持って帰れる物をと頼んだ。

飛んで帰り、佐田が父と共に帰ってくるのを待った。

階下で父の帰ってきた気配や物音がして、僕は慌てて、でも父には気付かれないように慎重に、一階へ向かった。

父は帰って来ると必ずバスルームへ直行する。

今なら気付かれずに済むはずだ。

慌てて扉を開けると、佐田が車のミラーを磨いていたので駆け寄ってこう言った。


「これに誓ってくれ」


そう言って先程買った宝飾店のケースごと突き出す。

佐田は僕がパジャマ姿でそこにいる事や、いきなり突き出された四角い箱など、疑問に感じる事は多々あっただろうに、一瞬だけ驚いた顔をしただけで、何も言わずに箱を受け取った。


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