みんなの冷蔵庫(仮)1
実験
シグマと私は俯きがちに京極の言葉を待った。

私は――多分、シグマも、お父さんを助けるためじゃないなんてこと考えてもいなかったから。

京極はテーブルの上で指を組み合わせ、遠くを見るような目をした。


「父は口を開けば『忙しい』ばかり言う人だったから、長いことほとんどまともに会話をしてない」


寂しそうなその言い方と、さっき「忙しいばかり言う人間は嫌い」だと言った京極の顔を思い出すと、私にまで寂しい気持ちがポッと胸の隙間へやってきた気がした。


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