みんなの冷蔵庫(仮)1
京極は少しだけ視線を泳がせ、前髪を軽く払った。


「最初は自分が冷蔵庫の中に入るとうるさかった」


確かに佐田さんなら自分が入ると言いそうだ。


「だから、それなら佐田が先に入って、次に僕だ。一緒に入ろう、と言って納得させた」


京極は何かを思い出すような目をして、口元をほころばせた。


「でも会社の事を考えても、佐田は残らなくてはいけない人間なんだ。重要参考人なんかになって事情聴取の日々を送ったり、母親とうちの父の内縁関係を根掘り葉掘り調べられたり、若気の至りで昔暴走族だった事なんかで揚げ足を取られてる場合じゃない。だから、佐田がいないうちに僕だけ冷蔵庫に入ろう」


「暴走族……」


突然出てきた単語に、私と同じく、目を見開きびっくりした様子のシグマと顔を見合わせる。

今の佐田さんからは想像もつかないけど……いや、言われてみると、落ち着きの中にある元ヤンの匂いがしなくもないけど、そういう過去があるとますます犯人扱いされるのかな、と想像してみた。



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