みんなの冷蔵庫(仮)1
――生き物


その響きは一瞬で私の体を強張らせる。

なかなか最後の覚悟が決まらない。


「ちょっと待っててくれ」


そう言って部屋を出て行く京極の背中を見て、私はどっと肩の力が抜ける。


「くららちゃん、大丈夫?」


同じように疲れているだろうに、シグマは私の側にしゃがみ込んで来て、心配そうに私の目を見上げた。


「うん」


シグマは両手を伸ばし、私の両手指先に触れた。

指先だけを手を繋ぐように握り、振り子みたいにゆっくりぶらぶらと左右に振った。

子供みたいに無邪気な顔をして、目だけは真剣に私を見て、微笑む。


「これなら、ドキドキしない?」


そう言われて今朝の事を思い出し、苦笑いを返す。

相手がシグマなら、さすがにこれくらいならドキドキしない。
子供の時はよく手を繋いでいたし。


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