みんなの冷蔵庫(仮)1
「シグマ……」


不安はゼロではないけど、安心や信頼が生まれ出す。


やらなくては。


うっすら浮かぶ涙を手の甲で拭い、私は二人に向かって頷いた。


「やる」


深呼吸をして、京極からゲージを受け取る。

両手で抱え、ウサギの目は見ないように顔を背け、目を閉じた。

今までの中で一番強く、はっきりとイメージを浮かべ、扉を開けた。

変に躊躇ってはいけないと思い、頭の冷蔵庫にそっとゲージを置き、扉を閉めると、腕から重さが消えた。

目を開け、すぐにシグマを振り返る。

シグマは無言で私に向かって頷き、直ぐさま指先をピンクに染めた。


十秒もすると、シグマの間隔を開けていた手の間に、ゲージが現れた。

ウサギは変わらず鼻をヒクヒクしていて、安堵のため息が大きく漏れた。


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