みんなの冷蔵庫(仮)1
キスと呼べるのか分からない、唇が触れただけのそれを終え、ゆっくりとシグマから離れる。

赤ちゃんみたいにすべすべで柔らかい肌の感触が、唇に残っている。

床に落としていた視線を上げると、シグマが目を開けてこちらを見ていた。

潤んだ瞳で私を見上げ、ゆっくり唇を動かした。


「俺、くららちゃんが欲しいとか、そんなわけじゃ、ないんだ」


何度も瞼を小さく震わせながら、浅い呼吸を繰り返し、かすれた声で途切れ途切れに続ける。


「ただ、どこにも、行かないで、欲しい」


いまだかつてない程の胸の苦しみが押し寄せ、ドワッと音がするくらい、涙が噴き出した。

なんで?
なんで今そんなこと言うの?!

さっきまで元気だったじゃない!!


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