みんなの冷蔵庫(仮)1
「精密検査とかやればいいだろ」


出入口に立つ京極が、多少苛立った口調で言った。


「研修医に無理言うなよ、しかも日曜に。てか、もしかしたら僕の分野かもしれない。君、糖尿病なの?」

「いいえ」


促されてシャツのボタンを開けながら、シグマは首を横に振った。


「細かい検査は時間がかかるけど、これだけはすぐわかるから、採血してもいい?」


謙信先生はシグマの胸と背中に何度か聴診器をあてていたけど、すぐに耳から外してまた首の後ろに下げた。

シグマはシャツのボタンを留めながら頷く。

謙信先生は部屋を出てあれこれ引き出しを物色し、注射器と、消毒薬を含ませたコットンみたいなものを手にして戻ってきた。


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