みんなの冷蔵庫(仮)1
「はい、チクッとするよー」


注射器が白い腕に刺さり、赤い血液が試験管みたいな透明の容器を満たしていく。


「じゃ、すぐだからちょっと待ってて」


謙信先生は針を抜いたところに素早く小さな四角い絆創膏を貼り、しばらくそこを押さえるよう指示をすると、部屋を出て行く。


そして五分もしないうちに手にリンゴジュースを持ち、戻ってきた。

部屋に入ると、立ったままシグマにリンゴジュースを手渡す。

初対面なんだから、シグマがリンゴ好きなんて知らないだろうに。

いや、知ってても何でこんなに大変な時にリンゴジュースなんて買いに行ってんのよ、と苛立ちが込み上げてくる。


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