みんなの冷蔵庫(仮)1
佐田はブルーのドアの前で立ち止まり、思案するように息を短く吐いた。


「さて……どうしましょう。普通にインターホンを押して出て来てくれますかね?」

「僕が立った方がいいかな?」


佐田はすぐ後ろに立つ僕を振り返り、冷めた表情で数秒見て、また何事もなかったかのように前を向いた。


「宅配便のフリとかが無難ですかね」


なぜ今の提案がスルーされたのかわからないが、もう一度言う気もないので、黙って背中を見た。


「郵便局です」


そう言って、何のためらいもなさそうにインターホンを押すと、ドアの魚眼レンズを左の親指で押さえた。

僕はドアが開いた時の事を考え、右にノブがあったのでドアの左隅に寄り、開いてすぐには見えない死角に立った。

ドアのすぐ向こうから、微かな物音と人の気配がする。


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