みんなの冷蔵庫(仮)1
突然腕が緩められ、肩を掴んで引き離される。

ほんの少しの距離を置いて向かい合い、目を反らせないよう縫い付けるように見つめられ、私は動けない。

シグマの瞳はうっすら涙が浮かび、きらきらと光る。

大きくて、口角がいつも上がっている唇は、キュッと一文字に結ばれていて。

シグマじゃないみたいだ。

シグマの何を知ってるんだ、と言われたらそれまでだけど。


とにかく、私の知らないシグマがそこにいて、苦しそうに私を見ていた。


「全然分かってない」


シグマは叱るようにそう言うと――






苦しい

息が
できない



吸い付くようにピッタリと、シグマの唇が私の口を塞いでいる。




キス


キスを

されている



キスされてる――!!




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