みんなの冷蔵庫(仮)1
シグマが掴んでいた私の手を離し、両手を耳の辺りから髪の中に指し入れてきた。

そしてやさしく、やさしく、撫でる。

鼻の頭に軽くキスを落とし、また唇に触れる。


そして突然割り込んできた、口の中の温かい感触。

それが舌だと分かると、麻痺していた私の全機能が一気に震えた。


「いやっ!」


両手でシグマを押しのけ、ソファーから飛び起きる。


そのまま振り返らずにドアを開け、飛び出す。


私も悪い。

今のは私も悪いけど



でもやっぱり嫌。

駄目だこんなの。


階段を降りようとして気付く。


外には出られないんだった。


どうしよう。


階段の手摺りに掴まって、どうするかあれこれ考え込んでいると、突然肩をポンと叩かれた。


「ひぇっ」


びっくりし過ぎて変な声が出て、恐る恐る振り返る。



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