みんなの冷蔵庫(仮)1
「なにその言い方」
と思う気持ちもお腹の中にあったけど、どうやらその心地良い声に魅了されたみたいで、素直に黙って紅茶をもう一口飲んだ。


「じゃ、まずシグマの話から」


そう言うと、京極は佐田さんを手招きで呼び、耳元で何かをコソコソと囁いた。

佐田さんは綺麗な角度のお辞儀をして出て行く。



「つい先週、ネットやテレビCMで宣伝をしたんだ。『手からピンク色の光を出せる人募集。謝礼五百万円』と」


京極が淡々と話し始めてすぐ、佐田さんが手に何かを持って戻ってきた。

それを京極が受け取り、私に差し出す。

今京極が口にした内容の言葉が、デカデカと赤い文字で書かれ、間隔を開けて合わせた両手から、バチバチとピンクの光を放つイラストが描かれていた。

妙にリアルなイラストで、先程見たシグマの放った光とそっくりだった。


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