みんなの冷蔵庫(仮)1
私は泥まみれの手でポケットから飴玉の包みを一つ出し、シグマに渡した。

飴玉を握って座り込むシグマの姿を見ると、急に胸が苦しくて、何やってんだろ、と自分の無謀さに虚しくなった。

穴は私達の膝くらいの深さしかない。


シグマは飴玉を口に入れ、立ち上がった。


「むむむー! 元気もりもり!」


そういうと、ガリガリと固い土を少しづつ削り出す。


「くららちゃん飴玉パワー凄いね! くららちゃんにもあげる」


そういってシグマは泥だらけの指で口の中の飴玉を掴み、私の口にほうり込んだ。


「何すんのよ!」
と、言えなかった。

あちこちに泥を付け、にこにこ笑顔のシグマを見ると、いつもと立場が逆になってしまったようで、照れ臭くって。

口の中を泥でじゃりじゃりさせながら飴玉を頬張り、二人でエイエイオーをした。


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