カフェには黒豹と王子様がいます
「まだ泣いてるのか?」

 小野田先輩が裏に来た。

「わるかったよ。ごめん、泣くなって」

 小野田先輩にそう言われれば言われるほど、あふれる涙。

 小野田先輩は私の頭をグイッと引き寄せた。

 目の前にある小野田先輩の左肩に、私のおでこがくっついた。

 心臓が波打つ。

 こんなにそばに小野田先輩がいる。

 この肩、小野田先輩の肩なんだよ?

 私の頭をつかんでいるのは、小野田先輩の右手なんだよ?

 どうしよう私!


 その時扉をノックする音がした。

 私達はパッと離れた。

「小野田くん、お客さん来たからお願いね」

 マスターの声だった。

 私も必死で涙を拭いて、フロアに戻った。

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