カフェには黒豹と王子様がいます
「絶対、西口さんに僕のこと好きになってもらいますから!」

「み、店の中でトラブルはやめてね」

 マスターはそれだけ言うと、厨房に逃げて行った。


 豊川くんは、癒し系子犬キャラで、あっという間にお客様たちの人気者になった。

 失敗もたくさんするけど、お客様の方がそれを許しちゃう。

 いらいらしているのは小野田先輩。

 お客様のために尽くす先輩には、ミスってもへらへら笑っている豊川くんが、許せないみたいだった。

「豊川!どうしてこんな間違いができるんだよ」

「あーすいませーん。気を付けます」

 ……軽い。

 あの小野田先輩のどなり声に動じない人なんていたんだ。


 今日は小野田先輩が遅番で、私が早番だった。

バイトが終わって店を出ようとしたときだった。 

 豊川くんが裏口で待っていた。

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