カフェには黒豹と王子様がいます
 小野田先輩がタクシーを降りる。

 こっちに向かってくる。

 
「お前……今、声……」

「声……でた」

 小野田先輩が下を向いた。

「よかった……よか……った……」

 泣いてる……?小野田先輩が……?

小野田先輩の腕にそっと触れると、いきなり私を強く抱きしめた。

「お、小野田先輩?」

「……ん」

「小野田先輩」

「うん」

「今日、フランス……行くんですね」

「うん」

 本当に行ってしまうんだ。

「……俺、カフェ『コンフォート』のシェフになりたいんだ」

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