カフェには黒豹と王子様がいます
 私は言葉が見つからなかった。

 小野田先輩もしばらく黙っていた。

 そして、そっと私から体を離した。

「急に、抱きしめたりしてごめん」

 首をふった。

「徳永は優しくしてくれるか?」

「……はい」

「たまには店にも顔出してやれよ。マスター、寂しがってたぞ」

「……はい」

「じゃあ、俺……行く……から」

 小野田先輩の手が私から離れる。

 その瞬間、私は小野田先輩に抱き付いた。


「小野田先輩!私、小野田先輩が好きです!」


 言ってしまった。きっとすぐそこで徳永先輩が聞いているのに。

「え?!だ、だってお前、徳永と……」

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