カフェには黒豹と王子様がいます

 ガチャーン


「し、失礼しました!」

 余計なことをしたらグラスごとトレンチを落としてしまった。

 割れたガラスのかけらを拾っていると、小野田先輩が鬼のような顔で向かってくる。

「す、すいません!」

「……あぶねえから、向こう行ってろ」

 怒ってる?怒ってるよね?怒鳴られた方がましなんですけど。

 大きなガラスを拾って箒で掃いている小野田先輩に、雑巾を持っていくと、こっちも見ずに雑巾を受け取った。

 もうお願いだから、いつもみたいに怒鳴ってよ。

 そのあとしばらくバタバタと忙しくて、謝る機会も逃したまま、早番だった小野田先輩のバイトが終わる時間になってしまった。

 お願いそんな怒ったまま帰らないで……と思っていたら、小野田先輩に呼び止められた。

「小指」
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