カフェには黒豹と王子様がいます
「恭ちゃん、大丈夫よ。大丈夫」

 涙が出た。

 元子さんが俺の頭をなでる。

「ちょっとだけ、顔……見せてください」

「……ちょっとだけ、ね」

 そっと病室に入ると、頭に包帯を巻いた西口がいた。

 心臓が止まりそうだった。

 徳永は……怪我した瞬間を見てるんだな……。

 だからあんなに顔面蒼白で……。

 俺なら耐えられるか……?

 西口のそばに行くこともできず、ガクッと膝をついた。

 元子さんが俺の肩をなでる。

「大丈夫だから」

 しばらく病室のすみで座っていたが、放置してきてしまった徳永が心配になった。

「元子さん、俺、徳永の所にいます」

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