カフェには黒豹と王子様がいます
「うん、ありがとう。優ちゃんの事よろしくね」

 俺は受付のソファで横になっている徳永のそばに戻った。

 ケンカに西口を巻き込んだことは許せねえ。

 でも、……キツかったろうな……。


 次の日、俺と徳永は病室の前にいた。

 どうやら豊川も帰らなかったかしく、昨日と同じ服を着ている。

「声が出ない」

 そう聞こえた。

 目を見開く徳永。

 おそらく俺も同じ顔をしていた。

「頭を打ったせいか?」

 また少し震える徳永の腕をつかんだ。

 徳永は俺の顔を見た。

 俺が小さく首をふると、目を伏せた。

 声が出ないのは精神的なものらしかった。

「よっぽど辛いことがあったのね。かわいそうに」

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