カフェには黒豹と王子様がいます
 マスターと豊川とあたしと香織さんで、誕生日を祝ってあげた。

 優はお礼と言って、みんなにコーヒーを入れてくれた。

 優のコーヒーを入れる腕は、以前よりかなり上がっていて、ものすごくおいしかった。

「もともと、いい勘してるんだよね、優くんは」

 マスターはおじバカ全開だったけど、まあ今日は許しとこう。

 夜遅くなって、いつもなら「今日子、帰るよ」と言うところの優が、

「遅くなったから送っていくよ」

 と香織さんに言っていた。

「じゃあ、僕、今日子さん!」

 今日ばかりは、明るい豊川に救われた気分だった。


 帰り道、豊川があたしの手をいきなり握った。

「何よ!離しなさいよ」

「やだね。知ってる?手の平から想いって伝わるんだよ」

「想い?何の想いよ!」

「ん、ん~……。伝わった?」

< 412 / 443 >

この作品をシェア

pagetop