カフェには黒豹と王子様がいます
「あんたね、しまいにはシュガーって呼ぶわよ」

「えー、シュガーじゃなくて、ソルトにして」

「ソルトって、あはははは」

 笑いながら、涙が出た。

 別に全然悲しくないし、泣くつもりも全然なかったのに、涙が出た。

 どうしちゃったんだろうあたし。

 しかもこんな奴の前で。

「えっとさ、どうしてあげたらいい?だ、抱きしめようか」

 両手を広げる豊川。

「絶対、ヤ・ダ!」

「そんなに力いっぱい嫌がらなくても」

「じゃあ、向こう向いてよ」

 豊川はあわてて向こうを向いた。

 あたしは豊川の背中で泣いた。

 豊川はあたしが泣き止むまで、ずっとじっとしててくれた。

 ちょっと落ち着いたけど、照れくさくなった。

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