カフェには黒豹と王子様がいます
「そんなのわかってるよ。いくつ?ねえ、西口さん」

 豊川くんは立ち上がって私のそばに来た。

 他の子たちは、それをにやにやと見ている。

 うまくかわさなくちゃ。

「仕事がありますので」

「僕たちだって客だよ。僕たちに接客するのも仕事だよね?」

 豊川くんは私の腕に向かって手を伸ばした。

 その時、私は反対の腕を軽くつかまれて引っ張られた。

「すいませんお客様、この店員は新人なので、ご用件は私が伺います」

 そう言って私の腕をつかんでいるのは、にこにこした徳永先輩だった。

 男の子たちは徳永先輩の身長と、少し低音の声に圧倒されたのか、椅子に座って、コーヒーを五つ注文した。


 裏に戻って徳永先輩に引っ張られたうでの感触にちょっとドキドキしていると、いつの間に来ていたのか、遅番の小野田先輩が私のそばに来た。

「徳永がいなかったら、どうなっていたと思ってるんだ!しっかり、きっぱり断ることは断らないとダメだろ!」
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