カフェには黒豹と王子様がいます
「ちょっとごめんな」

 私の隣に座っていた人が、私の腕をつかんだ。

「頼むよ、黒岩イラつかせると何するか分かんねえからさ」

 私は立たされて歩かされた。

 ずっと腕を掴まれていて、逃げることもできない。怖くて声も出ない。

 早く、早く来て小野田先輩!


 その時、声がした。


「……しぐち……にしぐち!」

 小野田先輩!

 とっさに小野田先輩の名前を呼ぼうとしたら、腕をつかまれている子に口をふさがれた。

「頼むよ、声出すなって」

 涙が止まらない。怖い、助けて!

「西口!」

 涙の向こうに小野田先輩の姿があった。

「お前ら何やってんだ!」



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