カフェには黒豹と王子様がいます
 表面をカリッと焼いたナッツのタルトに、生クリームをたっぷり乗せて口に入れると、香ばしさと甘すぎない生クリームが心を癒す。

「うまいだろ?」

「……おいしい」

「色気出すな」

 小野田先輩に小突かれた。

 色気を出したつもりはなかったんだけどな。

 向こうでテーブルを片付けながら私を見て、笑いをこらえている徳永先輩の姿も見える。

 厨房の方から食べている私の反応を見たくて、のぞきこむマスターの姿も見える。

 私、この店でバイトができることが本当に幸せ。

 この幸せをくれたマスターに恩返ししなくちゃ。

明日から頑張って接客しよう。

こんな幸せを少しでもお客さんに味わってほしい。

本気でそう思った。
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