カフェには黒豹と王子様がいます
 二時間ほどバタバタしてちょっと落ち着いたころ、一人の男の人が入ってきた。

 さっきバイトに入ってきた徳永先輩がお水を持っていくと、何か言われているようだった。

 ケーキのショーケースの所にいたので、話していることは聞こえなかったが、そのあと飛んできた竹本さんの態度ですぐに分かった。

 この人が竹本さんの意中の彼か~。

 
「あの人、竹本さんの友達?」

 徳永先輩が聞いてきた。

「そうみたいですね」

「もしかして、竹本さんの彼?」

「まだ、「彼」じゃないみたいですよ」

 分かりやすい竹本さんの態度が、なんだかかわいかった。

 
 竹本さんが厨房で彼に出すためのコーヒーを、丁寧に丁寧に入れている。

 その時、「彼」が、店の入り口に向かって手をあげた。

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