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「たった一日で崩されるなんて馬鹿みたい…」
「だな」
「だな…じゃないでしょ?本当にあたしを必要としてるのなら電話して」
「…てか、もう必要としてる」
グッと右手でリアの身体を抱くと、リアはフッと笑みを漏らした。
「ホントかな。まぁ、そー言う事にしとくわよ」
「なに?疑ってんの?」
「好きだから疑わない」
「他の男と寝てんのに?」
「愛はないけど。あるのは楓だけよ。じゃあ、あたしと寝てくれる?」
「辞めたらな」
「辞められたら困るから寝なくていい」
「なんだそれ」
フッと鼻で笑うと、リアは俺の頬から離し、今度は少し背伸びをして俯く俺の額と額をくっつけた。
「一番の楓じゃなきゃ嫌よ…」
「お前はどこまで俺のハードルを上げんの?」
「あたしの気がすむところまで」
「そっか」
「ねぇ、もっと抱きしめてよ」
そのリアの言葉に乗せられた様に俺の両腕がリアの腰と背中に回る。
背中に回った腕がリアの後頭部まで動かし、ゆっくりと頭を撫ぜた。
「これで満足?」
「何言ってんの?満足なわけないでしょ?」
「ははっ、そっか」
「…もう、帰るね」
「あぁ」
スッと離れた身体に、風が吹き抜け体温が落ちていくのが分かる。
リアはフッと短く息を吐き捨てると俺に背を向けた。
拾ったタクシーに乗り込んだリアを見て軽く手を上げ、去って行ったそのタクシーを見て一息吐いた。