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「あの子、みかん自分で育ててるのよ」
沙世さんはそう言って写真の画面を俺に向けた。
そこには農園かよ。と言うくらいにミカンの木があり、まだ緑から、黄色までのみかんが枝にぶら下がってた。
「まじかよ。ミカン育てる奴なんかいんのかよ。農園じゃねぇのに。すげー…」
「でもね酸っぱいのよ。今度、翔くんにもあげるね」
そう言って沙世さんは携帯を置く。
「は?いらねーよ、酸っぱいんだろ?」
「うん酸っぱい」
「尚更いらねーわ」
苦笑いで呟きながら短くなったタバコをすり潰す。
そんな俺の手元を見つめて沙世さんは、
「ねぇ、翔くんが結婚する時は教えてね」
なんて、とんでもない事を言いだす。
「は?つか結婚どころか相手いねーんだけど」
「え、そうなの?あんな沢山、女の子が居る所で働いてるのに?」
「仕事とプレイベートは別だから」
「へー…そうなんだ、以外」
「つか俺をどんな風に見てんだよ」
「女多き男って感じかな」
「は?意味分かんねー…」
「だってずっとそうだったでしょ?」
「ずっとねぇ…」
小さく呟き思い出すかのように俺は嘲笑的に笑う。
残りのアイス珈琲を全部飲み干す俺に、「お代わり入れようか?」と問いかける沙世さんに俺は腕に付けている時計に視線を落とした。
…3時05分。