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「あー…お前か」
振り返った先に居たのは流星で、そんな流星は俺の隣に居る沙世さんに視線を送る。
「え、誰?」
不思議そうに俺と沙世さんを交互に見つめる流星に、
「私、この子の母です」
なんて、沙世さんは笑顔で言う。
心ん中で″馬鹿じゃねーの″なんて思いながら顔を顰める俺。
「え、お前の母親?…え?」
流星は戸惑ったように目を見開く。
そらそうだろ。
もう亡くなってるって言ってあんだから。
「そうなんです。いつも息子がお世話になって――…」
「違げぇだろ」
面白がって言う沙世さんに俺はポケットに突っ込んでいた手を出し、沙世さんの背中を軽く叩くも、
「え、愛人かよ」
流星のとんでもない言葉が更に落ちる。
「あ、やっぱりそう見えます?よく言われるんです」
「え、まじっすか?」
「よくも言われねーし、マジじゃねーし。母親でも愛人でもねーし。この人はただのお節介の母親役」
「は?」
「ちょ、なんなの、それ!」
案の定、流星の戸惑った声が落ち、沙世さんの小さなヒステリックな声が落ちる。
「まーまー、また今度話すわ。じゃーな、」
「おー…」
手を軽く上げ、足を進める俺に、沙世さんは俺の背中をバチンと叩いた。