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「痛ってーな、」
「ちょっとあれはないでしょ?なんなのお節介な母親役って!」
「だってそーだろ」
「お節介は余計でしょ?」
「んな事ねーけど、もう散々さっき説教されたし」
「説教じゃないって言ってるでしょ?」
沙世さんは本気で怒ったのか、顔を顰めたまま俺を軽く睨む。
「まー、そんな怒んなくても。綺麗な顔、崩したらダメだろ。ね、ママさん?」
口角を上げポンと軽く沙世さんの肩を叩く。
その行為に沙世さんは呆れた様に軽く息を吐き捨てた。
「私の事、馬鹿にしてるの?仕事とプライベートは別じゃなかったの?」
「別だけど」
「今は、プライベートでしょ?」
「さぁ…」
「仕事用語、私に言われても困るんだけど」
「別に仕事用語でもねーし」
「もぅ、ほんとになんなのよ!」
歩幅が小さくなった沙世さんから少し離れ、俺はその先をスタスタと歩く。
未だふくれっ面になる沙世さんに、苦笑いしてると、
「ちょ、楓っ、」
また新たに聞こえた甲高い声に不意に足を止めた。
その拍子にグイッと掴まれた腕に、蹈鞴(たたら)を踏む。
「おいっ、」
身体を正しく持ち直すと同時に見下ろすとミカが眉を寄せていた。
「えっ、何!?ミカ、抜け駆けしてたの!?」
「楓くんといつから知り合いなわけ!?」
更に甲高い2人の声がミカの後ろから聞こえ、この状況にため息が漏れた。
きっとキャバ嬢の女だろう。