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「助けてあげよっか?」
「は?」
「あたし店に行くよ?」
いつものミカじゃないように真剣に俺を見つめ軽く腕を掴む。
そんな空気の中、
「えぇー、なんなのミカ!?じゃあ、あたしも行く」
「そうだよ。楓くんの事、知らないふりしときながら一人で抜け駆けして最低じゃん!」
「ほんとだよ、あたしだってね、楓くんの事好きなんだから!」
ミカの友達であろう二人の声が反響する。
つか、マジで勘弁して。
その光景から軽く視線を外すと、沙世さんは意地悪そうに笑みを漏らして俺に視線を向けていた。
その笑みに俺は物凄く嫌な予感がした。
「別に、抜け駆けなんてしてないし。楓とは飲み会で知り合っただけなの」
「飲み会!?」
「聞いてないよ、そんなの!」
3人で揉め合いになる光景に深いため息を吐き出し、俺はミカの肩を掴む。
「はいはい、気持ちはありがたく受け取っとくわ。別にお前に来てもらうほどヤワじゃねーから」
″な、″
付け加えるようにしてミカの肩をポンと叩くと、ミカは少し納得したのか頬を緩める。
「だよね」
そう開き直ったミカに何度か軽く頷いた。
むしろこんな調子で来てもらったら面倒くせーし、揉め合いに時間かける余裕もねーし。
「じゃーな、」
「う、うん。…じゃーね」
ミカ達を背後にヒラヒラと手を振ると、俺の後をついてくる沙世さんはクスクス笑って、俺の隣に来る。
「へー…、なるほどね。それであんなに酔ってたんだ」
「……」
「私も店に行こうかな」
「マジで勘弁」
「なんなのよ、その言い方。で、何で休んだわけ?」
やっぱ聞かれると思った。
沙世さんは俺を見上げて意地悪く笑う。