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「梅雨…?だからじゃね?」

「でも最近降ってないよ、雨…」

「知らねーよ、そんなの。俺、天気予報士じゃねーし」



クスクス笑う美咲の声が聞こえたのかと思うと、「ねぇ…」その小さな美咲の声のトーンが落ちる。


「うん?」

「なんかあったの?」

「何で?」

「いや、そんな感じがしたから」

「別に。だから送れなくてごめんって言おうとしただけ」

「ふーん…」


受話口から微かに漏れてくる予鈴。

そうだよな、こいつ高校生なんだよな。


まじで高校生には興味ねーのに…

なのに俺、何してんだよ。


「あ、あたしもう行くから」

「ちゃんと授業受けんだ」

「当たり前でしょ」


密かに笑う俺にツンとした口調が返ってくる。

そんな美咲に、「じゃーな、」と言葉を残し一方的に電話を切る。

そしてそのまま俺はもう一度、目を瞑った。


目を開けたのは、タケルに起こされたからで、完全に睡魔に落ちていた事にため息を吐く。


沙世さんに言われた″何でやめないの″って言葉が駆け巡り、理由すら分からない。

ただホストで食っていこうとする気もないって言ったのは確かで、じゃあホストを辞める…と言う選択技は今は全くなかった。
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