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久し振りに足を運ばせた場所は、ズラッと盛大な墓が並ぶ墓地。
ここに来たら絶対思い出すから、敢えて来なかった場所。
歩く足に合わせて敷き詰められてある小石が音を鳴らす。
次第に見えてくる″芹沢家″の文字に、軽く目を閉じて一息吐いた。
目の前に立ち、墓石の上に乗っかっていた落ち葉を手で払う。
そこにまだ新しく咲き誇っている花は、きっと沙世さんだろうと。
俺は手に持っていた花を、そこに一緒に差し込んだ。
そしてペットボトルの蓋を開け、天辺から水を掛け線香に火を点ける。
「…ごめん」
口を開いてすぐの言葉は、たったその一言で、しゃがんで俯く。
話す言葉なんて見つからない。
何を話したらいいのか分からねぇし、多分きっと色んな事に口を開くと、涙か落ちるだろうと。
今更かよ、と思う。
亡くなった時すら涙一滴も落とさなかった俺が、今更になって出すとかありえねぇ…よな。
ただ言えるのは、もっと親孝行しとけば良かったと。
母親一つで育ててくれたお袋に、感謝しとけば良かったと。
会話もロクにぜず亡くなったお袋に申し訳なさが込み上げる。
「…沙世さんから、」
暫く経って口を開いた俺は、目の前の墓をジッと見つめた。