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「あ、あぁ…10人っす」
「多くねーか?」
「いや、分かんないっす。で、お互い五分五分っす」
「俺にも報酬分けろよ?」
「はい?ある訳ないじゃないっすか」
「お前らは暇人かよ」
「だから楓さんに勝ってもらわないと、ダメなんす」
「つかよ、俺を使うんじゃなくて、お前らの中で順位競えよ」
「いやだから話の流れで。つか今、充電中なんすよね!俺、賭けてますよ、楓さんに!ヘルプでも何でもやるんで」
笑みを浮かべながら俺の肩をポンポンと叩くアキに軽くため息が漏れる。
俺を応援するよりお前が頑張れよ、と思いつつ手に持っていたタバコをすり潰し、最後の煙を吐き捨てた後、表へと出た。
「楓くん、こっち、こっちー」
「楓くーん、」
出た瞬間、客で埋まりつくすフロアの中、甲高い声が飛ぶ。
その声の主を辿る様に視線を送ると、「あー…」思わず2人組の女に苦笑いが漏れた。
「マジで来たんすか?」
苦笑いが消えないままそう言った俺は、席に着く。
「行くって言ったじゃん」
声を上げて俺の腕に触れたのは、あの夜。沙世さんと一緒に居た時に出会った女。
要するに沙世さんが経営する店のホステス達だった。
「冗談かと思ってたから」
「えー冗談なわけないよ。今日は沙世ママに行くって言ってきたの」
「つかそんな事、いちいち言わなくていいっすよ」
苦笑いしながら俺の頭の中は沙世さんで埋まってた。
また何を言ったかしんねーけど、マジ勘弁してほしい。
「だってさー、だってさー、沙世ママ=楓くんって、考えたらマジヤバくない?」
「ヤバい、ヤバい。前から楓くんの事、気になってたけど更に?…みたいな」
「沙世ママに楽しんできてーって言われたの」
沙世さんの会話だけに、入った時から苦笑いすら止まらなく。
俺は両隣の女の肩を軽く同時に叩いた。