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「もーそれ絶対乾杯したら次に消えるでしょ?」
あながち間違ってない女に、口元を緩ませる。
「それは分からん。この一杯で酔ってしまって気づけばお前とベッドの中かも知れんし」
「えー…あるわけないでしょ?」
「あったらどうする?」
「あったら?」
「うん」
「あったらー…抱きつく」
「抱きつくって、もう既にくっついてんだろ」
俺の腰に腕を回し、見上げて来る女は更に頬を緩める。
もぅその表情は酔ってる証。
「もっと、ずっと一日、離さないくらいに」
「つか、お前もうお茶にしとけ。酒は体に悪いからな」
これ以上、酔われると厄介だった。後の介護を俺がどうにか出来るわけでもなく、フロアに視線を配り近くに居たサトルを呼ぶ。
サトルにお茶を頼んだ後、「えー…もう行くの?」女の不満げな声が耳を掠めた。
「また直ぐに来る」
「すぐっていつ?」
「あー、ほらほら。俺と思え」
席に着いたサトルの肩を軽く揉む。
女は「えー…」と声を上げるも、「何がえーなんすか!」とサトルの声が軽快に飛んだ。
「もー楓さん、俺も仲間に入ってんすから、賭けの」
「だろーな」
「負けたら、楓さんが払ってくださいっすよ」
もう多少、酔ってるサトルの額を指で軽く押す。
グランと揺れたサトルは苦笑いし、さっきの女と軽快に話を進めだす。
その後、何ヵ所か席に着き、一度バックヤードに向かおうとした時、
「楓さーん!!」
遠くに居たルイがマイク越しで叫び、足を進めて来た。