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「俺が楓さんの歴史を壊すんで」
「歴史?」
「ここで俺が一番に這い上がります。っつーか、もう超えてます」
俺の両肩に手を置いて揺さぶってくるルイに軽く舌打ちしそうになる。
ほんとコイツは喧嘩売るの好きだな。
手、どけろよ。と思いつつ俺は軽くフッと鼻で笑った。
「へー…まぁいいんじゃねーの?」
「それは負けたって認めるんすね?」
「いや、認めてねーよ。だけど、ここでもし俺が負けたとしても歴史を壊した、とはまた違うからな、」
普段ムキにならねぇ俺が何故かそこまで言った事に、ため息が漏れる。
冷静さを保とうとしたけど、何故か今はそうにも出来なかった。
いつもなら、あっそ。と言ってそれで終わりにするけれど、何故か今日はルイにイライラする。
そんなルイは俺とは打って変わっての余裕の笑み。
女と身体張って、トップを目指そうとしているお前と俺は違う。
俺と一緒にすんじゃねぇよ。
「違うってなんすか?」
「言っとくけど、3年間落ちた事ねぇの。たかが一回落ちただけで壊されたらシャレになんねぇし」
「いや、一回じゃないっす。これから俺が上がるんで。楓さん、後悔しますよ、きっと」
「後悔?いや、お前に後悔するほど、落ちぶれてねぇし。ま、まぁ…頑張れよ」
ルイの肩をポンと叩いて、その場をそそくさと離れる。
軽く舌打ちしつつも、俺は一旦、外に出た。
夜空に向かって伸びをし、その場にしゃがみ込む。
取り出したタバコを咥えて、火を点けた。
そして空いているもう片方の手で携帯を取り出し画面をスクロールさせた。