Domain
笑いながら、へいへい。と言って歩く彩斗の背後にため息を吐く。
タバコを消して立ち上がり、俺は駅に向かって歩き出した。
時間がないと言えば時間がない。
その挙句、余裕もない。
ルイの挑発的な言葉も気にくわねぇし、俺に賭けられてるのも気に入らない。
もぅ、その時点で俺の中での結果なんか、既に決まっているわけで。
駅の近くのビルに背をつけて、リアの名前を画面に出した。
"あたしが必要なら電話してよ″
そう言われたものの、そのリアの番号を見ると何故か躊躇う。
普段電話もしねぇのに…
俺からしたら弱ってる時だけ電話すんなよって感じだな。
「…ほんと電話してこないわね」
暫く居ると不意に聞こえた声に俺は視線を上げる。
目の前に顔を顰めたリアに思わず目を見開いた。
真っ赤なミニスカートに黒のピンヒール。
相変わらず派手な格好に派手な化粧。だけどリアの顔にはそれが浮きもせず、それどころか周りの視線がこっちに向く。
そう。俺じゃなくて、リアに。
「今、電話しようとしてた所」
そう言って画面に表示されたリアの番号を見せる。
「遅すぎじゃない?だから来たわよ」
「そう。ありがとう」
ある意味良かったと思いつつ、携帯をポケットに突っ込み、その俺の腕にリアは腕を絡めた。
「楓はほんとに冷たいよね…」
「ガツガツしないほうが好きなんじゃねぇの?」
「まぁ間違ってはいないけど…」
納得がいかないのか、少し頬を膨らませたリアとの会話なんてこんなもん。
弾けるどころか、冷め切った会話。
なのに、どうしてリアは俺なんだろうと。