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店に一緒に入った瞬間に、周りの視線が一斉に向く。
こんな光景、初めてじゃねーけど、何故か俺には心地いいもんでもなかった。
まるで皆の視線が、やっぱり連れて来たって言う視線に見えて仕方がない。
「来ないんじゃなかったのかよ、」
ホストとしてありえない言葉を吐き出す俺にリアはフッと鼻で笑う。
いや、こんな言葉リアにしか言えねーけど。
ここでこうやって話す言葉はまるで冷め切ってて、周りの空気すら読めなくなる。
まるで俺が接客をしてるんじゃなくて、俺がホステスの女に接客されているようなもんだ。
ほんと俺が客。
「何でそんな事聞くのよ。来るって分かってるくせに」
「いや、今回はマジで来ねーと思ったから」
「そう。じゃ来ない方が良かったわね」
「そんな事、言うなって」
テーブルにあるタバコの箱を掴み、そこから一本取り出し口に咥える。
「じゃ、聞かないでくれる?」
火を点けた瞬間、ごもっともと言える言葉を吐き出したリアに苦笑いが零れた。
「悪いな、聞いて」
「好きな男の顔を見に来て何が悪いのよ」
「好きな男ねぇ…俺は嬉しいけどね。リアの顔見たかったし」
「どう言う基準で嬉しいとか言ってんのか分かんないんだけど」
「お前は特別だよ」
″特別″
何を根拠にそんな事言ったのかも分かんない。だけど、特別と言う言葉にあながち間違ってない事は確か。
でもそれが恋愛と言う範囲に入るのかどうかは別として。
それ以上の一戦は、超えたくない。