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「あれ?全然嬉しそうじゃねーじゃん」
「そんな事ねぇよ」
嬉しくないわけがない。
ただ、今回は正直物凄い身体的にキツかった所為もあり、声に出さないだけで内心はホッしている。
他の奴に抜かされてもいいけど、ルイだけには抜かされたくなかった。
その言葉を聞いた所為か、また再び目を閉じようとした瞬間。
「おい、お前。まだ寝る気?」
「トビの仕事、休み」
「そんな事、聞いてねーよ。帰んねーのかよ」
「もうちょい休んだら」
「休みだったら帰って寝ろよ」
「立ち上がる元気もねーわ」
そう口にした俺に流星はクスクス笑いだす。
「んじゃ俺帰るから鍵掛けとけよ」
「あぁ」
流星が立ち上がったのを見てから俺はもう一度、目を閉じた。
ほんとに一瞬だったその眠りは2時間程度で、冷蔵庫から水を取り出した俺は一気に流し込む。
フロアに出てタバコを咥え、天井を仰ぐ。
誰一人居ない、この空間が何故か居心地よく感じてしまった。だけど、その空間に過った美咲の顔。
気づけば俺は携帯を取り出し、美咲に着信音を鳴らしていた。
だけど何度掛けても出ない電話にため息をつく。
何やってんだよ。と思いつつ切った携帯の画面を見つめる。
土曜日。学校は休みのはず…
携帯を握りしめたまま時間だけがただ過ぎていき、また掛けた電話にさえも美咲は出る事はなかった。
別にアイツに逢着するつもりはない。
だけど、あの日。″助けて…″そう呟いた言葉が今もまだ、頭の片隅から消える事は一切なかった。