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「で、どうしたの?」
「あの…お金、美咲から受け取ったんですけど」
「あー…美咲から聞いた?」
「聞いたと言うか、詳しい事は言ってくれないですけど。借りたって言ってました」
「そっか」
「お金は彩吹さんですよね?すみません、ほんとに。必ず、必ず返すんで」
頭を必死で下げる葵ちゃんの肩を軽くトントンと叩く。
その所為で葵ちゃんは申し訳なさそうに顔を顰め、ゆっくりと頭を上げた。
「いいよ、返さなくて」
「いえ、必ず返すんで。美咲は…美咲はあたしが返すって言ってたんですけど、やっぱりあたしが使ったので、必ずちゃんと返します」
「いや、ほんとに俺はいいんだけどね。それより身体はもう大丈夫?」
「大丈夫です」
吹っ切れたのか、葵ちゃんは薄っすら笑みを浮かべた。
「そう、良かった。ねぇ、ところで美咲は今、何してんの?」
「…美咲、ですか?」
「そう。ちょっと気になって電話したんだけど、出ねぇんだよ」
「あー…多分、美術館だと」
「え、美術館?」
予想外にビックリした言葉に俺は少し声を上げ、目を見開く。
美咲イコール美術館なんて絶対に想像すらつかない。
そんな唖然とする俺の表情を見たのか、葵ちゃんのクスクス笑った声が聞こえた。
「そうですよね。ビックリですよね、美咲が美術館なんて」
そう言ってもう一度笑う葵ちゃんに、俺も苦笑いが漏れた。