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美術館に着いて、室内を見渡す。
思ったよりもザワザワしてて、その人の多さに正直驚く。
当たり前に美術館に来た事すらねぇから普段の人の多さなんて知らないけど、予想外に多いと感じた。
その人の多さを避けながら辺りを見渡した時。丁度一番奥の場所で突っ立っている美咲を目で捉えた。
目の前にある一つの写真から視線を離そうともせず見つめている美咲に思わず頬が緩む。
それは居た事の安心感からくる安堵だった。
凛とする姿。
その姿がマジで高校生には見えねぇよな。なんて思いながら足を進め、背後に立つ。
その背後に居る事もさえ気づかない美咲は相当にこの写真が気になってるんだろうか。
「…オーストラリア」
不意に呟いた俺に振り返った美咲は、ここぞとばかりに目を見開く。
相当に驚いたのか、美咲は目を見開いたまま俺の全身に視線を送った。
「何…、してんの?」
「何してんのじゃねぇよ。電話無視すんなよ」
軽く息を吐いた俺は美咲から視線を逸らし、再び目の前の写真に目を向けた。
透き通った海が途轍もなく綺麗で、見惚れるのも無理がない。
「…電話したの?」
「したの?って、気づいてねぇのかよ」
思わず呆れた様にフッと鼻で笑い美咲に視線を送った。
確認するかのように美咲は携帯を取り出し操作をし始める。
「あっ、ほんとだ」
「気づくの遅ぇ…。久しぶりに電話したのに、みぃちゃん出ねぇし」
あっけなく返された言葉に思わずため息交じりで口を開いた。
だけど相変わらずだと思うと何故か頬が緩む。