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「ねぇ…、今日トビの仕事は?」
「あー…、休みってか、毎日行ってるわけじゃねぇよ」
「そうなんだ。じゃあ何でやめないの?」
「何が?」
「トビの仕事」
誰もがみんな、その言葉を口にする。
どっちか辞めねぇのかって。
何でそんな気にしてんだよ。と思いながら眉を潜め、少し空を仰いだ。
「前にも言っただろ。好きだからって…、それにいつかはホストも辞めようと思ってるし、辞めてすぐ現場仕事なんて簡単に出来ねぇ。身体がついていかねぇよ。だから慣らしみたいなもん」
「そっか…」
小さく呟いた美咲に口角を上げた。
だけど、これ以上、美咲と居る時間はない。
もう日没が迫っている限り時間にすると19時は過ぎているのだろう。
携帯をポケットから取り出し、その時間にため息を吐きだす。
19時15分。
さっき頻繁に鳴ってたのはやはり流星だった。
「ごめん。もう帰んねぇと仕事遅れる」
もうとっくに遅れてるし遅刻。
だけど何故か美咲と居る手前、そんな事、口になんて出来なかった。
ホストに行くと言う言葉を口にしたくないのは、美咲から見る俺がそんな男だとは思われたくない為。
何故か、やっぱり美咲の前だと夜の男だとは思われたくなかった。
案の定、美咲は何考えてんのか分かんねぇけど俯いたまま表情を崩す。
つか、そんな悲しそうな顔すんなよ。
そんな困ったような顔すんなよ。
お前は俺の女でも何でもねぇのに、そんな顔されっと困る。