Domain
「みぃちゃん?」
黙りこくる美咲に声を掛けると、それに反応した美咲はゆっくりと顔を上げる。
「どした?」
続けて言葉を掛ける俺に美咲は悲しそうに首を横に振った。
「ごめんな。あんま居れなくて…。また今度、来ような。みぃちゃんはちゃんと家に送るから」
思わず表情を崩してしまった俺は、美咲に背を向けて足を進ませる。
途中、脱ぎ捨てた自分の靴と美咲のを手に持って再び足を進め、駐車場の水道で砂まみれの足を洗い流した。
車に乗ってすぐタバコに火を点け、時間を確認する。
昼飯もせずにここに来た所為か、お腹に限界を感じる。
それを紛らわそうとタバコの煙を吸いながら、ふと隣に居る美咲に視線を送る。
どうせ美咲も食ってねえだろ。と思い俺は口を開いた。
「そういや、みぃちゃん昼食った?」
昼。というより、もう夕飯の時間。
振り返った美咲に俺は首を傾げた。
「あー…、忘れてた」
…やっぱり。
「何だそれ…」
思わず笑みを零し、俺は灰皿にタバコを打ち付け更に口を開く。
「カツサンドとか好き?」
「うん。好きだけど…」
「俺、すげぇ旨い所、知ってんだ。今から行くからそれ昼飯に食えよ…。っつっても、もうすぐ夜飯になるけど」
っつーか、もうすぐじゃなくても、この時間からすると夜飯。
だけど昼も食わず、きっと帰ってからも美咲は何も食わないだろう。
そう思うと何故か食わせねーと。と思う過保護みたいな俺が居る事に正直、笑いの笑みが零れそうだった。